こんなユーザー No.103
日本のリゾート地沖縄県の産業活性化を進める
─ 沖縄県工業技術センター ─


センター概要
所在地〒904-2234 沖縄県志川市州崎12-2 中域湾港地区トロピカルテクノパーク内
TEL:098-929-0111
FAX:098-929-0115
代表者所長 七尾 淳也 氏
ホームページhttp://www.koushi.pref.okinawa.jp/
事業内容地域技術の先端的研究機関として沖縄県の自立的経済発展を担い、
製造業の技術支援や先端的研究の実施


工業技術センター全景


 3月2日(木)、沖縄県内の各種産業界の方々が70名以上参加する講演会が那覇市内で行われました。
当初からは、福井県発明協会支部長の公職にある松浦社長が沖縄県発明協会からのお招きを受け講師として出席致しました。
翌日沖縄県工業技術センターを松浦社長同行で取材いたしました。
同センターでは平成10(1998)年にマツウラの超高速マシニングセンタ FX-1(主軸回転数3万回転)が設備されています。
同センターは沖縄県の中部に位置する中城湾に埋め立てられたトロピカルテクノパーク内に建設され、敷地面積は30,000uと広く、 また建物は美術館、またホテルと見間違えそうな南国風ものです。
建物を見ても沖縄県の産業活性化に賭ける姿勢の意気込みが伝わる気がいたします。

 沖縄県の産業構造は第3次産業の割合が高く、観光産業が基幹産業のトップとして位置づけられています。
県内総生産に占める第2次産業の割合は14%と低く、そうのうち工業などの純粋な製造業は4.9%しかない状況です。
近年、健康食品ブームで沖縄県の産業が注目されていますが、それを支える基盤技術の育成が大きな課題となっています。

FX-1お土産品の金型製作に挑戦

 沖縄県工業技術センターの「機械金属部門」は4つの分野から構成されています。
金属加工分野では金属材料を中心とした機械加工技術、放電加工技術、溶接・接合技術、プレス・鋳造技術等の高度化に関する開発を行っています。
その他「金属化学分野」、「機械電子分野」、「エンジニアリング分野」と分かれ、地域特性を生かす技術基盤の創生を図っています。

 近年、工業技術センターでは、原材料の搬入から製品の出荷まで一貫した生産ラインを沖縄県内で持つことが地域社会の発展に繋がると考えています。
その一部の実験モデルとして、お土産として販売される数々の魚などキャラクターの金型製作を実施しています。
キャラクターのモデルをレーザー測定機で形状データを測定し、そのデータを基にしてガラスへの加工や金型の製作をします。
ガラスに微細加工する為に高速加工機が必要と考えマツウラの主軸回転数3万回転の超高速加工機「FX-1」を設備しています。
同センターではテストサンプルから、より現実性を高めるために実際の産業と直結するような金型製作を「FX−1」で実行しています。
今までは、このような金型は殆ど東大阪の加工業者に委託しており、沖縄県内で加工することなど、誰も考えていませんでした。
同センターではこれを実際に製作することで、県内での金型製作が可能であるとの実証をしています。


高速加工機 FX-1

観光地から産業観光地への成長を目指す

 NHKの朝の連続ドラマ「ちゅらさん」等TV、マスコミなどで沖縄県が取上げられ、地方都市としては毎年人口が増えています。
しかし都市部から移られる方々の仕事の確保が難しく、美しい自然の観光産業だけでは今後の沖縄県産業の将来性が危ぶまれています。
例えばゴーヤーなどを原料にした健康食品がマスコミで取上げられ沖縄の産業として期待されています。
しかし沖縄の人々が消費する量なら生産できますが、全国ブランドとなると、その生産量が確保できません。

 それゆえ価格の安い宮崎産、鹿児島産などのゴーヤーが店頭に並んでいるのが現状です。
また全国へ商品として出荷するために、原料の洗浄からパッキングまでの最終製品への加工が県内では難しい状況ですが、 ほとんどの企業は、京都や大阪等の県外企業に一部あるいは全工程を委託し、再び沖縄に戻して、沖縄ブランドとして出荷しています。

 沖縄は健康食品だけでなく、伝統工芸品にも独自の素晴らしい製品に恵まれています。
しかし工程の多くが手作業であるため、家内工業から脱せず、産業として成長できない状況です。
沖縄ブランドが有名になり、外部から注目されると価格の安い海外や県外のまがい品が溢れ、結果的に沖縄の産業を圧迫しているのが現状です。

 現在32名の研究員で、県内の産業技術に関連する開発研究を日々実施していますが、研究員は実際の生産現場での経験不足もあり、工程設計に関わる研究が遅れています。
また県内の産業界も積極的に新しい生産ラインの導入に踏み切るには、資金確保等の面から思うように進まない状況です。

 センターとしては沖縄県の産業育成の為に各研究員が中核となり、生産から販売までの工程設計や、それに必要な生産ラインの提案ができる能力向上が不可欠と考えています。
その意味でも研究員の方々は全国レベルで企業への見学、研修等を積極的に行いたいと考えています。


高速加工機 FX-1で加工されたゴーヤーの金型


テストサンプル加工説明


 初めての沖縄訪問でした。
美しい自然に感動する一方で、多くの米軍基地また沖縄平和祈念公園での各県の戦没者の祈念碑や多数の戦没者のお名前を見ると、 現在の日本の繁栄は、この沖縄の地の犠牲があればこそ、と改めて身の締まる思いでした。
沖縄がリゾート地として多数の人々の訪問が増えることは嬉しいことです。
しかし健康食品など沖縄独自の文化が世界から認識され、それを支える基盤産業が育成されて沖縄県が自立できることが、先人への恩返しではないかと感じた取材でした。


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