ユーザーを訪ねて No.123
株式会社 ヨシノ

日本の新商品開発を試作加工で支える技術系企業


株式会社ヨシノの会社概要
本社
 電話番号
 FAX番号
〒192-0154 東京都八王子市下恩方町308-14
0426-52-0558
0426-52-0560
代 表 者代表取締役 吉野 紳一 氏
設 立昭和60(1985)年12月
創 業昭和47(1969)年
従 業 員15名
事業概要業務用カメラ及び音響設備の試作・量産加工、真空装置、測定器の加工・組立て

株式会社ヨシノ
工場全景



 今回は、東京JR中央線・八王子駅の次駅・高尾駅から車で15分ほど北上した下恩方工業団地内にある株式会社ヨシノを取材しました。
高尾山の麓に位置する工業団地内で、周りは緑に囲まれ東京中心部とは2,3度気温が低く感じる環境の良い所です。

 「高校生の時、夏休みのアルバイトで自宅近くの工場で“ものづくり”をしていました。 その会社では、汎用施盤やカム式自動盤でライターのネジや機械部品を製作していましたが、面白くなって学校を辞めて、そのまま就職してしまいました」と “ものづくり”の業界に関わった切っ掛けを語ってくれたのは、社長の吉野紳一氏です。

 しかしこの会社は、倒産、それで仕事を一部引継ぎ22歳で東京都日野市にて吉野製作所として独立。
当時は、施盤が主流でフライスの経験は殆どありませんでした。


大手電気メーカーの試作加工に従事

吉野社長
株式会社ヨシノ社長 吉野 紳一 氏

 昭和60(1985)年に有限会社吉野製作所として法人設立、昭和61(1986)年に日野市から八王子市へ移転。
その中で大手電気メーカーの試作加工を手掛け、信用を築いていきました。
施盤が主流であったために、マシニングセンタの実習を、その大手電気メーカーの工場で受けていました。
その時の機械がマツウラのマシニングセンタであり、それがマツウラとの出逢いとなりました。
八王子市が、住宅と工場が混在している状況をできるだけ解消し、中小企業者に経営しやすい環境を提供することを目的として整備した、 下恩方工場団地に新工場を建設し、同時に実習を受けていたマツウラのマシニングセンタを設備することを決めてMC-760VXを平成3(1991)年導入、 本格的に高精度な試作作りを始めました。
14年経過した現在でもこの機械は、第一線で活躍しています。
それ以後、MC-800VGが1台、MC-660Vが2台、そして平成16(2004)年にV.Plus-800(主軸回転数2万回転)を設備し、 合計5台のマツウラのマシニングセンタが稼動しています。
「新規設備を検討する時に、何時も今回は横形の機械にしようかと悩むが、多品種少量生産に適している立形を、どうしても選択してきた」と吉野社長。


吉野社長の信念は「約束は必ず守る」

 取引先は、大手電気メーカーですが、多数の事業部の仕事に対応しています。
業務用カメラや音響設備などの試作加工だけでなく、半導体関連の量産部品(月産100セット)を手掛けることで、 試作と量産のバランスの取れた経営基盤を形成しています。
「社員に任せる経営をやってきた。“約束は必ず守る”を常に社員には言っているし、行動している。 仕事の納期は守る、出来なければ出来ないと言う。これが商売の基本です。 簡単そうで中々出来ないのが“約束を守る”です。例えば試作加工ではミスをすることがあります。 試作だからこれぐらいのミスは許されるだろうと甘えることがあります。 しかし、当社の社員は、妥協せず試作でも完成品を作ります。 他社で10年以上経験している人を採用した時もありましたが、加工技術や品質の要求度合が高いために即戦力にならなかった経験が何回もありました。 当社の社員は、本当に立派ですよ」と吉野社長は、大変嬉しそうに話されました。

 更に同社長は「試作部品ですから設計者が全ての部品の加工方法や精度を把握できない場合もあります。 当社では、長年の経験から図面の求めている機能を考察し、設計者に必要精度や加工方法などアドバイスをすることもあります。 設計者は、当社で試作部品を製作することに安心感を持たれています。 この様な取組みが評価され、設計者から加工指名を受けたり、また直接打合せの要求が出されるまでの信頼関係を培ってきました」と。
14年経過してもフル稼働のMC-760VX 平成9年に設備されたMC-800VG


マツウラの精度的信頼は高い

 「お客様にマツウラを使っていると言うと、それだけで“仕事は間違いない”と評価されたことが何度かありました。 マツウラのマシニングセンタを使って精度的信頼は高いと実感しています。 初号機のMC-760VXは、14年経過していますが、剛性も高く現役でバリバリ切削しています」とマツウラを高評価。
しかし一方で工場内は、整理・整頓が隅々まで行なわれ、機械を大事に使うことが精度的信頼を更に高めている様感じました。
14年前の初号機もきれいに清掃され、メーカーの人間としてこれほどまでに大事に使われている機械を見ると、大変嬉しく思いました。

 作業台をみると、見事に整理整頓がされています。仕事をする上で、ミスを起こさないための整理整頓です。
例えば、作業台上の整理です。ある作業台では、加工終了ワークのみが正確に並べてありました。
このことで加工前の素材が誤って混入しないように工夫していました。
この他にも感心したことは、多数ありましたが、小さいことの積み重ねが、高精度を維持していると実感しました。

 「穴加工、位置決めは、機械が良ければ精度は出ます。 しかし直角度、平面度、平行度は、機械精度が良くても工程を間違えると出ない。 試作の難しさは、この要求精度を必ず実現することです。 社員が色々失敗しながら構築した加工技術力が、当社の企業力です。 私は、何もしていない。素晴らしい社員に恵まれてこの会社は、存続しているのです」と吉野社長は、最後に語られました。
主軸回転15,000のMC-660VG 2台 最新機種V.Plus-800



 事務所内に銅版の“青春”との詩が掲げられていました。
その中に「人は信念と共に若く、疑惑と共に老ゆる。人は自信と共に若く、恐怖と共に老ゆる。 希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる」とありました。
工場内を案内して頂いた時に社員の方々との会話から、工場全体が信念と自信を基にした勢いを体感し、 また吉野社長と社員の方々との信頼の深さを強く感じた取材でした。


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