マツウラにて
金属光造形複合加工技術セミナー開催


 マツウラでは、平成14(2002)年の第21回日本国際工作機械見本市JIMTOF2002に金属光造形複合加工機のプロトタイプを展示し、 準備したカタログが全て無くなる程、大変な注目を集めました。
その後、機器の改良を進め、焼結レーザをYAGレーザからCO2レーザへ変更、またレーザの照射方法をXY軸の動きからガルバノミラー方式に変更した 「M-PHOTON 25C」を平成15(2003)年市場に発表。
この機械は、第33回日本産業技術大賞・文部科学大臣賞の栄誉に輝きました。
更に価格、また性能をより市場に合わせた「LUMEX 25C」を、平成16(2004)年に市場に投入し現在に至っています。

 今回、金属光造形複合加工法の基本特許を持ち開発当初からのパートナーである松下電工株式会社様と、 この加工技術に早くから注目し多数の金型製作を企画実施してきた株式会社テクノス様との共催で、 自動車産業関連企業様向けに金属光造形複合技術セミナーを開催しました。

 セミナーは、7月14日(木)の9時から福井市内のユア−ズホテルで開催されました。
午後よりマツウラ本社に移動して工場見学、また金属光造形複合加工機「LUMEX 25C」による実演加工、更に自動車部品を実際に成形した金型及びサンプル品の見学となりました。
出席者は、自動車関連企業を含め全国から20社約70名の参加があり、最新技術を習得しようとする真剣な雰囲気の中で開催されました。


セミナー会場風景

最新加工技術の紹介


本田技研工業株式会社 技術主任 栗原 恒夫 氏

 セミナーは、始めに開催挨拶を当社レーザ事業推進室の友田富夫室長が行いました。
友田室長より「弊社、松下電工様、またテクノス様が中心となり、金属光造形複合加工法による自動車関連の金型試作及び、成形テストを実施してきた事例と、 専用CAM開発や、サービスビューロとして取り組まれているOPMラボラトリー様の事例を発表しますので、今後の皆様の金型開発の参考に是非していただきたい」との挨拶がありました。
次に開催者代表として松浦正則社長より「欧州、アジアの出張を通し、日本のものづくりを間違いなく引張っているのは、自動車産業であり、 自動関連の金型製作に関する金属光造形複合加工技術のセミナーを当社で開催できることは、大変光栄であります。 また皆様に最新の技術を納得いくまで見て頂きたい」と語られました。
更に今回のセミナー開催にご尽力頂いた本田技研工業株式会社の栗原恒夫技術主任様より 「初めてこの技術に触れた時、この技術はすごいと直感、数々のテストを繰り返してきました。 この技術を自動車関連の金型量産に利用するのは、日本初であり、すなわち世界初となります。 今まで取り組んできた技術を紹介いたしますので、是非とも世界初に挑戦し頂きたい」との力強い挨拶を頂きました。

「マツウラの取組み」
株式会社松浦機械製作所 レーザ事業推進室長 友田 富夫

 マツウラの技術開発の歴史から、常に最先端技術に挑戦してきた過程を紹介。
そしてマツウラでは、高速加工の限界を超えるためレーザ技術に注目し研究を進めていたこと、 また松下電工様での商品開発を短縮するために設計の3Dデータを直接使った金型製作の要望があり、この加工機の開発が行えたことが、発表されました。
またこの加工技術を開発する上で、機械本体は主にマツウラが開発し、基本特許を持つ松下電工様は主に材料を、 CAMはOPMラボラトリー社様、そして金型製作にはOPMラボラトリー社様と松下電工様が主に関わっているとの役割分担を報告しました。


「松下電工開発の経過」」
松下電工株式会社 生産技術研究所 部長 吉田 徳雄 氏



 「情報関連商品や家電商品は、多様化した市場のニーズに対応するために、最新の技術を盛込んだ新商品が次々と開発されている。 そのため商品寿命の短命化が進み、3〜6ヶ月で新商品に入れ替わるケースも多く、金型製作を含めた商品開発期間の短縮は、重要であり、企業の存亡にもかかわる。 その中で、コンカレント・エンジニアリングのツールとして金属光造形複合加工技術の開発を行い、金型製造工法の革新による短納期、 低コスト金型の実現に挑戦してきた。」と今までの経過が語られました。

 また、この加工技術で製作された実績が紹介され、金型製作:約150面、量産金型:約40面、金型耐久性:10万ショット以上(30万ショット以上に実績あり)であり、 金属光造形複合加工技術が、量産金型製作までに到達していることをアピールしました。


「自動車部品の適応例」
株式会社テクノス 横浜営業所 営業課長 大橋 一勝 氏



 株式会社テクノスは、金型の設計・製作を行っています。
光ディスク用金型から半導体用封止金型、更には自動車や電子機器などに使われるプラスチック金型を手掛け、その技術力は、業界でもトップクラスです。
「第一ステップでは、自動車部品の金型を従来の金属光造形加工機での製作と、今回の複合機での製作を行い、その違いを検証しています。 複合機では高速加工技術により精度が得られ、成形トライではバリが出ないなど量産展開が可能との評価をしました。 また第二ステップでは、小型部品の量産金型にも挑戦し、ライティング・タッチ感評価、寸法評価、組込外観評価で今までの量産製品と同等な品質が得られ、 金型寿命は現在6万ショットで継続して評価中、その上金型製作コストが2/3を達成しました。 第三ステップでは、自動車部品では必要となる大型複雑形状に挑戦し、量産への可能性を評価しています。 キャビ型は、従来のマシニングセンタでの直接加工を実施。 コア型は、大型のために4分割して複合加工機での金型製作に挑戦。 また今までの金型製作では絶対に出来なかった金型内に冷却水路の組込みも行い、理想的な金型製作を目指しました。 結果3週間で成形品の提出が行え、当初目標の4週間(従来工法比30%短縮)をクリアしました。 コストは、型加工費30%低減、成形サイクル30%短縮など画期的な効果が得られました」との発表がありました。


「他業種での適用例」
株式会社OPMラボラトリー 代表取締役社長 森本 一穂 氏



 OPMラボラトリー社についてはマツウラニュース5月号で紹介していますが、「LUMEX 25C」を設備し実施に複合加工機による金型製作や専用CAMの販売などの業務をビジネス化している企業です。
「依頼された金型製作において、金属光造形複合加工のメリット、及びデメリットの検討を行い、最適な造形手順の提案を行っています。 また独自の切削CAMの開発を行うことで、可能性をレベルアップしています。 実例として、複雑な形状を持つ金型製作では、全ての形状を複合加工で製作するのではなく、プレートの厚みを利用して効率よい加工の提案をしました。 また電子部品金型では、機能部品である複雑な形状のみを複合加工で製作することで、工期を半分にまで低減した事例がありました」と報告されました。
次に複合加工における焼結状態と切削の関係が説明され、OPM社が開発している専用CAMでのレーザ焼結の軌跡データと切削工具の軌跡データのアルゴリズムが説明されました。


「最新の工作機械」
株式会社松浦機械製作所 開発研究部 加藤 敏彦

 マツウラにおけるマシングセンタ開発の取組みとして、高速高精度マシニングセンタ、そして5軸マシニングセンタについて説明がありました。
高速高精度マシニングセンタでは、駆動軸にリニアモータを採用したLXシリーズが紹介され、 また5軸マシニングではMAM72シリーズまたリニアモータとダイレクトドライブを採用した「LX-0 5AX」が紹介されました。


実機「LUMEX 25C」また金型の展示で熱気溢れる会場

 午後は、マツウラ本社へ移動。
工場見学またテクニカルセンター内で「LUMEX 25C」の実機と各社が実加工された金型の見学が行われました。
テクニカルセンター内は、最新の複合加工技術の詳細情報を学び取ろうとする熱気に包まれ、盛んに議論されている場面がありました。
工場見学後に質問会が開催されました。
質問会では、焼結の材料開発に関する質問や、中国市場への販売に関する件など、運用面まで突っ込んだ質問が多く出されていました。
多数の質問により、複合加工技術の将来性に大きな希望を持てた中で、セミナ−は成功理に終了いたしました。


活発な議論が行われたテクニカルセンター内


 金属光造形複合加工技術は、ようやく実用化され世の中に認知されてきました。
各分野の専門企業との共同開発で今後も更に成長していく技術であり、また世界初の工法を提案できるとの強い印象が残りました。
発表頂いた企業が、複合加工技術を手にしたことで、「金型製作に新しい革新を実現する」と“志”を共有し、新しいコラボレーションが生まれているのを実感しました。
その一端をマツウラが担い、技術革新に参加できることは、大変名誉なことと感じるセミナーとなりました。
今後も出来るだけ複合加工技術については、マツウラニュースに掲載しますので、注目して下さい。


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