Focus 【7】
産学官連携共同研究の仲介

教育・研究そして社会貢献をめざす大学


 大学は何するところ―と、本来の使命を真正面から取り組みはじめた大学。
なかでも国立大学が平成16年4月、新しく「国立大学法人」に生まれ変わった事を契機に、さまざまな活動を展開しています。
大学は教育と研究の使命に、新しく社会貢献が加わってきたからです。

 「知の創造と活用の時代」における大学への期待は大きく増し、国立大学の法人化を機会に多様で特色ある教育機関に生まれ変わろうと、 明治以来の画期的な大改革に取り組み始めました。
教育や研究だけでなく、地域社会への多様な学習や、企業等への教育研究成果の公開、企業や行政機関などとの共同研究などが、 大学の大きな使命であり社会貢献の中核事業になっています。

 今年の春、福井大学・金沢大学・富山大学の北陸三大学連携による「まちなかセミナー」も、社会還元の一例でした。
「自然・文化・食をテーマとした北陸発・知的探求の旅」を、福井・金沢・富山の各会場で実施。
参加者は各会場とも4〜50名と少人数ながら「大学も、大きく変化しているんだ」と認識を新たにアピールしています。

 また、実績のある、企業と大学、あるいは企業と行政機関や公的研究機関との共同研究、すなわち「産学連携」「産学官連携」による共同研究なども、 国立大学の法人化を契機に「大学の重要かつ多様な活動のひとつ」と位置づけ、いよいよ本格的な展開が始まっています。

 さて産学官連携の中核となる機関が、各大学に設置されている「地域共同研究センター」です。
そして大学で産学官連携を推進する際に、不可決な技術・法務・財務など専門的な知識を有する人材を、 大学などのニーズに応じて文部科学省が採用し、各大学に専門家として派遣されるのが「産学官連携コーディネーター」です。
これらの仕組みによって大学の研究成果や、産学官による共同研究の大学側の参加や連携によって、社会還元・社会貢献するよう運営されています。

 この産学官連携コーディネーター(常勤)は、平成16年3月現在で文部科学省で採用され、 各大学へ派遣されているのは全国80大学で、103名。
103名中、ほぼ95%以上が民間人を起用されているところにも、大学や国の力の入れかたが伺えます。


人間関係が産学官連携の原点!
福井大学地域共同研究センター 常勤・産学官連携コーディネーター/小坂 忠夫 氏


小坂 忠夫
小坂 忠夫 氏

 国立大学法人・福井大学の地域共同研究センター、産学官連携コーディネーターで現在活躍中の、 小坂忠夫氏(65才)は平成15年4月から、福井大学に派遣されています。

 小坂忠夫氏は明治大学工学部機械工学科卒後、日本ピストンリングを経て、昭和45(1970)年マツウラに入社し昭和60(1985)年に取締役に就任。
入社いらい技術部門を中心として、国内営業担当やソフトウエア事業部長を歴任し企業経営の中枢に係わりながら、 企業経営の実際を体得され、昨年3月にマツウラ取締役を退任された、キャリアの持ち主です。

 「社会に役立つ、産業界に役立つ研究をする、させるという大学側の意識改革が今、吹き荒れています。 なかでも大学教官の意識を変える事が大事で、これが難しい。 今までは予算消化、やっただけ、というと悪口になるんですが、これからは社会貢献・還元をいかにうまくやるか。 社会から認められない大学は不要ですからね。 草の根の地道な活動で一歩ずつ、です」と小坂忠夫氏は話します。

 企業側と大学の教官側とのマッチングには、骨が折れるとも話す小坂氏は、 「毎度ありがとうございます。という言葉を聞いて、驚いている教官や職員ばかり」と苦笑いも。
小坂氏がコーディネーターに就任して1年。
常勤として福井県内を隈無く歩いた事業所は80ヶ所も。
うち10社余りは喰いついてきた由で、技術相談も延べ40件と成果は上々。
 「福井は、作る事に特化していますが、開発・販売・マーケティングには弱い。 豊かさもあり、中途半端でガッツもない。 大学と親しいところは、放っといても来る。 問題は大学など訪ねてもいない事業所を、どうするか。 企業でいえば新規開拓ですね。 何かしてやる、何か教えてやるという意識がある限り、大学は敷居が高いといわれます。 やはり毎度ありがとうございますと人間関係が、産学官連携の原点ですよ。 世の中、だんだん複雑になりスピードも要求される。 大学も人間も研究も、うまく融合しなければ。 そのため、いろんな角度から気軽に相談に応じる、雰囲気作りをしていきます―」とは、常勤でこの1年間活躍の、 産学官連携コーディネーター・小坂氏の総括の弁でした。


気軽に大学とつきあえる場の提供を
福井大学・産学官コーディネーター/玉村 都夫 氏


玉村 都夫
玉村 都夫 氏

 平成13年(2001)年4月から、福井大学・産学官連携の非常勤コーディネーターを、福井大学から委嘱されているのが、 マツウラ・カスタマーサポート部門担当の玉村都夫氏(53才)。
地域共同研究センターの舞台裏で活躍しているスタッフ8名の非常勤コーディネーターの1人です。

 玉村氏は、大阪大学大学院・機械工学専攻を卒業後、建設機械や産業機械の大手メーカー、小松製作所(現コマツ)を経て、 昭和57(1982)年9月にマツウラに入社。
いらい製造部門の現場から資材部門、製造部門、技術部門と経験され、現在はカスタマーサポートの品質保証部門で活躍中です。

 「企業側と大学側のマッチングを円滑にするために、微力ながら係わっています。 1ヶ月に1〜2回の研究座学やミーティングには、欠かさず出席して、企業側の経究者や経営者と大学側との調整というより、 両者の仲介を円滑にする手伝いをしています。 必らず出席される経営者や研究者の熱意を何とか、活かしたい。 そしてこれを大学が目ざす社会貢献や社会還元などに、結びつける―。 大きな意味でなく、気軽に大学とつきあえる場所の提供が、私の役目と心得ています」とは、玉村氏の言葉です。



福井大学地域共同研究センター
  産学官連携コーディネーター
〒910-8507 福井市文京3-9-1
TEL:0776-27-8956
FAX:0776-27-8955
直通:0776-27-8019



前画面へ戻る