2004年の日本経済を予測する!

・形式値・暗黙値の落差感をどう埋める?
・景気の良し悪しのモノサシは何か?



 「景気が悪い」といわれて、今年で14年。
その起点は、バブル時代の絶頂期だった、1990年でした。
いらい日本経済は空白の10年とか12年といわれてきました。
この景気の良し悪しとは、どんなモノサシや基準でしょうか。
GDPやGNPなど経済成長率が公式な基準でしょうが、私達が肌で感じる景況感とは、随分の違いがあります。

 例えば2004年3月に「2003年10−12月のGDPは、年率換算6.4%」と修正し発表。
この高い数字はデフレの低落分が調整された由ですから、実態とは大きな落差が出ます。
まして私達のモノサシは「自分の懐具合と主観」そのものですから、「最高に景気が良かった時を基準」にして都合よく感じ、 これが大多数の声になっています。
消費支出がデフレで減るよりも、収入増そのものを「良くなった」と思うのが、大きな落差となっているのです。

 個人の主観が、このように懐具合そのものですから、企業の95%を占める日本の「マイカンパニーの中小企業」の経営者や従業員も、 恐らく同じような考えでしょう。
GDPに代表される基準の形式値と、現場・現実・現物から肌や経験測などのモノサシでみる暗黙値とでは、 こんな違いが生まれてくると考えます。


日本経済の明るさ、見えた! 今年こそと思い続けて、14年目─

 「2004年日本経済は、円高やデフレなど不安要因を抱えつつ、回復基調が続く」 「日本経済は緩やかな景気回復が続く」などと、2004年正月のマスメディアは、著名なシンクタンクやエコノミスト、 一流企業の経営者などのコメントをまとめ、2004年経済見通しを「景気浮揚」と結論。

 さらに政府要人の「明るい見通し」発言に続き、1月6日開催の経済三団体賀詞会でも、明るい発言が目立ちましたし、 各業界団体の賀詞会でも異口同音に「今年は良い」との発言が続きます。
「今は日の出前、冬の朝6時頃の感じ」「国際情勢のリスクもあるが、経済の夜明けになる年。 中小企業や地方経済は多少おくれているが」などと―。

 また視野を世界に転じれば、経済と政治が連動しており国際政治はイラク戦争・北朝鮮問題そして世界の新秩序になる選挙に、注目する必要があります。
「2003年が戦争の年と見れば、2004年は世界の選挙の年」といわれるのも当然で、国際の潮流を左右する重要な選挙が目白押し。
露大統領選、米大統領選は国際情勢をゆるがしかねない選挙ですし、ギリシヤやスペイン総選挙でも親米路線から仏独に近づけば、 ヨーロッパとアメリカのシナリオは大きく狂います。
さらにアジアでも、日本の参議院選を始め台湾総統選・韓国総選挙・フィリピン大統領選、 そして中東のイラン議会選挙・インド総選挙やサウジアラビア地方選が相次ぎ、目が離せません。

 「マネーに国境なし、情報に国境なし」の今、国際情勢の鍵を握る「通貨」でも、衰退しつつある世界の基軸通貨の米ドル安。
反対に世界基軸通貨を狙い台頭しはじめたユーロ、そして中国の人民元の行方なども見逃せません。
さらに世界の食資源や石油や鉄鉱石などに代表される資源、貴金属、希少金属系などの商品市況には、 今の世界時流から見て、中東情勢が落ちつくまで注目すべき要点でしょう。

 2002年1月、日本経済景況を底として、景気回復・拡大期間は25ヶ月と連続しているものの、デフレ傾向は変わらず実態が乏しい―とは、 現在の景況感ですが、「日本経済の夜明けは予感から実感へ動きつつある。でも不安要素があって先行き不透明」が、大方の見方になっています。


9,500億円の受注(+11%強)を予測 工作機械の景況観は、今年も強含み─

 「長かったトンネルを抜け出しつつある」とは、日本工作機械工業会会長で豊田工機株式会社会長・社長の大西匡氏の言葉。
これを裏付けて、2002年10月からの工作機械受注高の前年実績がプラスなのは、今年2月まで連続17ヶ月を達成しました。

 自動車業界やデジタル関連向けの旺盛な設備投資、中国を中心にしたアジア地域からの外需増、 一般機械からの受注促進など予想を超えた回復が、大きく寄与しています。
その結果、2003年受注は8,511億円と前年比+25.9%(内需4,416億円+26.1%、外需4,095億円+25.8%)になりました。
2004年の受注は「旺盛な設備投資意欲と活発な更新需要」をキーワードにして、 2003年比で+11.6%(うち内需+13.2%、外需+9.9%)と、全般的に足腰がしっかりした状況になりましょう。

 ちなみに、今年2−3月の工作機械業界の需給動向は、強含みに推移し、「受注価格は下げ止まり、むしろ値戻しへ。 引合も活発で価格よりは、短納期ないしは即納に近い要求もある。 そして状況は素材や機械・電気関連などの主要部品の供給不足と価格上昇が辛い問題になっている」ような、繁忙なれども好況感は腹八分なみの状況です。


世界情勢のマクロ、日本市場のミクロ─ ともにリスクを見ながら、明るい予測が!

 世界情勢からマクロでみるか、国内の業界や個別レベルのミクロで見るのか。
世界視野から全体を把握し、国内のレベルで考え実感するのが、正しく景況感を判断できるのではないでしょうか―。

 まず世界視野で捉えるマクロ的予測として、2003年予測でズバリ看破した、元米国国務長官ヘンリー・キッシンジャー博士の「2003年10の予測」を検証し、 さらに「2004年10の予測」を見ましょう。

 2003年予測は、2003年1月5日テレビ東京系の「ヒダカリポート」で放映されました。
その10の予測は、
  1. イラク戦争は世界経済に、あまり大きな影響を与えない。
  2. 石油の値段は戦争が始まると上がるが、短期間で下がる。
  3. 北朝鮮は2003年後半、核開発についてアメリカと話し合いを始める事になる。
  4. 日本・中国・アメリカ・ロシアの4ヶ国が一緒に行動すれば、金正日を操る事ができる。
  5. 2003年朝鮮半島では戦争は起きない。
  6. アメリカ経済は2003年、3%拡大しブッシュ大統領の人気は依然として高い。
  7. 私は日本に歴史的な信頼を持っているので、2003年か04年には、日本が今の難局から抜け出すと信じている。
  8. ロシアは中国より危険だが、プーチン大統領は2002年と同じような状態を今年も続ける。
  9. 中国は経済拡大を続け、大きな混乱や突然の変化は起きない。
  10. 円とドルの交換レートは、1ドル130〜140円になる。
 この「2003年予測10」では、円ドル交換レートの違いだけで、9項目は予想どおりでした。
では、2004年の予測はどうでしょう。
今年1月4日同じくテレビ東京系で放送された「キッシンジャー博士の2004年10の予測」は、次のとおりです。
  1. イラクでは新政府が作られ、今年前半はゲリラ活動がひどくなるが、次第に落ち着くだろう。
  2. イラク駐留のアメリカ軍が大きく減る事はない。
  3. 朝鮮半島におけるアメリカ軍の先制攻撃はないだろう。
  4. 正気を失わない限り、金正日が暴発する事はない。
  5. 中国経済は、8〜10%拡大する。
  6. 中国で大きな混乱や変動が起きる事はないだろう。
  7. ブッシュ大統領は楽々と再選される。
  8. ブッシュ第二期政権の閣僚の顔ぶれは変わるが、政策は変わらない。
  9. 日本経済は2.5〜3.0%拡大する。
  10. 自衛隊のイラク出動は成功し、新しい日本の外交政策の基本を作ることになろう。
大胆な世界視点から見た「キッシンジャー博士の2004年10の予測」は、今年の確率が楽しみですね。

 また野村総合研究所主席研究員から、早稲田大学大学院公共経営研究科教授へ転身の、 エコノミスト・植草一秀氏の「日本経済の現状と展望」セミナーから、日本から見たミクロ的視野の「2004年日本経済」をまとめてみました。
以下、そのまとめは、
  1. 日本経済は2003年を陰の極とし、緩やかな改善過程を伴って陽の方向に移行しつつある。
  2. しかし経済の本格浮上のためには、経済政策の明確な転換が不可欠。
  3. 名目GDPの停滞は続き、全体として閉塞感・停滞感は払拭できない。
  4. イラク情勢等を背景に小泉政権の基礎が弱体化する事が、事態改善の手掛かりとなる。
  5. 米国経済は堅調に推移するが、年後半にドル下落圧力の強まりから、株価下落・金利上昇の波乱の可能性を内包する。
  6. 中国の成長持続が見込まれる。
  7. 金利・株価の基本方向転換の可能性を視野に入れ、資金運用戦略の抜本的見直しが求められる。
これは植草教授の2003年12月東京、2004年1月大阪、2月福井の各セミナーで話されたものの要約です。


最後は自己責任による確かな予測と決断が!

 2004年景況は「明るく浮揚間違いなし」と予測され、早3ヶ月たちました。
株価も堅調に上昇していますし、いろいろなリスクを抱えつつ、実態景況も確実に上向いています。
また景況回復は、いよいよ大企業から中小企業へ、中央から地方へ、そして企業から個人や家計へむかうものと思います。
それも意外と速くなるのでは―。
勿論、座して好況を待つのではなく、自分から勧んで努力し積極果敢に摂りにいく「自己努力」があってこそは、いつの時代でも当然でしょう。

 GDPやGNPの指数が上向いても、自分の懐具合や自社の業況は良くならないことは、いうまでもありません。
また見込みや予測は、平均値や多数決で決まらないことも事実です。
ましてスポンサーやオーナーが見え隠れするシンクタンクやエコノミストが、予測し研究発表するデータや資料を基礎にした、 最大公約数や平均値は、私の経験測から殆んど役立ちません。

 私達は浮草稼業の机上論に頼ることなく、そして景気指標やGDPの伸び率などに一喜一憂せず、現場・現実・現物を実感し、 自分の身体と経験に基づき、自分だけの責任ある予測によって、すばやく行動するのが一番―。
最後は自己責任による、決断と確実な行動だけが2004年の予測を本物にする唯一の方策と思います。

(渡辺清一)

グラフ


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