誌上再録:ftb福井テレビ「ザ・タイムリーふくい」
2003(平成15)年10月19日放送
初の民間副知事の戦略に迫る!

卓越した経営手腕に期待大
山本雅俊副知事/松浦正則社長と対談



 平成15年8月、民間出身初の福井県副知事に就任の、山本雅俊氏。
自動車電装品メーカーのデンソー常務から、外資系企業デュポンのトップを経て、地方行政・福井県のナンバー2に。
この華麗な転身は「福井県に梅雨明けを持ち込んだ」といわれ、「着任して福井で、おせじでなく福井を楽しんでます」の言葉通り、 平成15年の夏の福井県下の話題を独占―。

 その山本副知事が着任され2.5ヶ月経った昨年の10月中旬、福井テレビの看板自主制作番組「ザ・タイムリーふくい」に登場しました。

 福井テレビの日曜特番「ザ・タイムリーふくい」は毎週日曜日の午前11時から50分放映されています。
この番組は昭和53(1978)年4月スタートした同社自主制作番組「フクイ'78」が前身で放映開始。
平成6(1994)年4月、現タイトル「ザ・タイムリーふくい」に改編し、今日に至っている1/4世紀を見てきた長寿番組。
同テレビが本番組を「意見を主張するテレビ社説」と位置づけて、放映開始から時々の身近な話題を中心に深く掘り下げ、 タイムリーに制作放映されています。

 同テレビ編成業務局長の小川 忍氏は「放送開始から視聴者の反応も良く、根強い固定ファンもあり、 昭和44(1969)年10月開局の当テレビに、欠かせぬ番組になり今日に至っています」と話しています。
今回は平成15(2003)年10月19日放映の同番組「ザ・タイムリーふくい」で「初の民間副知事の戦略に迫る」をテーマ―。

 本誌では、放送された同番組の要旨をダイジェストし、ftb福井テレビのご厚意により、誌上再録しました。




山本雅俊 副知事松浦正則 社長

まずコミュニケーションを大事にする

 同番組のキャスター、高橋昭一・安野由里子の両氏から質問された山本副知事は、 「私の性格は悪い意味でおっちょこちょい、良い意味で好奇心旺盛。 西川新知事のマニフェストが副知事になる決め手でした。 そして私がやることはまず、コミュニケーションを大事にしていく。 それは新しいアイデアは人と人との話し合いの中から出てくるからです。 お互いコミュニケーションを良くすることが、新しく良いアイデアが出せるのではないか」と率直に答えています。

 また同キャスターが副知事に「福井に関する5つの質問」で、次のように応えています。(赤文字下線部分が答えで、若干の説明があります)
  1. 福井駅前は思ったよりキュートだった(福井にはノスタルジックな面がある)
  2. 西川知事は思ったより市民派だった(元官僚らしからぬ柔軟なフットワークがありそう)
  3. 県職員は思ったよりフレキシブルだった(新しい知事が着任して変わったのではないか)
  4. 県議会は思ったより情熱的だった(真剣かつ本音で議論する情熱を持っている議員が多い)
  5. 福井県の企業は思ったより個性的だった(小粒だが個性的なものが多い)


 デンソーで活躍されていた頃の山本副知事について、同社の社員から聴いた人物像は、次のようなものでした。

「仕事をしやすくするムード作りがうまい」
「良くやった次も頑張ろうなと、コミュニケーションを大事にしていました」
「他人より一歩も二歩も前を見て考え、行動していました」
「チャレンジ精神が旺盛でした」
「新たな世界に入られますね。大いに期待しています」



山本副知事の戦略:福井の産業をどうするか!

―福井の産業について、松浦機械の松浦社長をまじえて伺います。松浦さんは前から知り合いだったとか。

松浦社長:デンソーのパーティーでお目にかかったことが。
また同社の山本さんの先輩役員だった田辺さんから、山本さんの人柄などを伺っています。
本当に良い人が福井に着任されて嬉しく、また面白くなった思いです。
なかなか古いしきたりで変えられなかった福井を、民間側から見てきた経験と、 福井が知らない方であるだけに思い切って変えられるのでは、と期待しています。
山本副知事:福井の企業は粒が小さい。
けど潰れないのは技術を持つなど、個性的だからでしょう。

―産業界に活気をの思いから西川知事が、県経済社会活性化会議を提唱され、その委員に副知事もなっているが。

山本:今まで6回、会議を開き活性化のための具体的な提案をまとめます。
松浦:この委員は県外で活躍された方も入っており、本音で語っているから大いに期待している。
だから思い切って、バッサリ切り開いた提案をしないと変化が見えない。
山本:バッサリやることは沢山ある。
県のビジネスは私企業と違うところがある。
県の仕事で7〜8割は変えてはいけないもの、残り2〜3割を重点に考えねば。
ただ今まで10割全部を去年と同じにやろうとしている。
教育や福祉など変化できないものが7〜8割。
残りに変革を求め、重点投資していく。

―知事は選択と集中といっているが―。

山本:言葉は簡単だが、皆なが理解し納得せねば。
これが難しい。これをどうするか、です。

―知事は福井を、繊維と機械のメッカにすると―。

山本:それも、ひとつの方法です。
繊維は昔から一番強い産業といわれ事実なのだが、福井の皆さんはそう言わない。
どちらかといえば中国などに攻められ、被害者意識に固まっている。
もっと強いところを、どんどん前面に出して攻めねば。
実際にそれを乗り越え、活躍している企業が沢山ある。
だから、もっと伸ばし目を向けねば。
そうすれば、もっと伸びる。

―知事は個性を伸ばして、新規企業を伸ばしたいと。

松浦:いま時代は大きく変革しているが、その認識がもてない。
過去の成功例など柵から抜け出せない。
ところが中国やグローバルな動きの中で、追い上げを喰っている。
以前から、こんなことをいわれている。
本業を続けても駄目、本業を廃めても駄目、中身を変えろと。
この時こそ福井県の工技センターや支援センター、大学などの力を借りて、今までの中身の全部ではなく一部だけ、 オリジナリティを持って変えれば良い。
それだけのパワーは充分もっている。




産官学ビジネス、まず自己努力が!

―松浦さんは、かねてから産官学をビジネスにして、やってこられた。いま新しい時代だから、なおさら―。

松浦:はい、これから大きく変わります。
道州制なども視野に入れ、それぞれの地方の時代を活かすには、大学を含めたパワーを、どうするのか。
10〜20年後の福井を、学のあり方で問わなければ、特に人材育成をどうするか、です。
シーズをニーズに変える時の理論武装を、そこでさせる。
そうすれば、遠い存在だった大学や工技センターや支援センターが身近になってくる。
そして企業も大学もセンターも受身にならずに、どんどん往来する。
立命館大学などは、セールスしてますよ。
お高く止まらずに自分がやっていること、求めていることをオープンにし、相互に接近することが大事です。
山本:県のビジネスを民営化する可能性もあるが、なかなか難しい。
県には企画立案する優秀な人が沢山いる。
普通の企業なら、工場があり企画し製造そして販売もしている。
ところが県には営業がない。売って出ようとしない。
だから理屈は、県が民営化すれば、そのビジネスを営業が売り出し、ビジネスを大きくするだろう。
学でも官でも、民営化して売っていかねば、商売しなければと思う。

―販売が大事ですね。ところで支援センター理事長に、副知事が就任された由。中小企業対策をどうしますか。

山本:県では融資や金利引き下げ、補助金などで随分やっている。
これを活用せよといえば、ルールが厳しく難しいという。
税金だからやむをえないが、もう少し歩みよれば何とかなるのではないか。
公や県が持つ資金やパワーを使って、もう少し活性化できるはず。
それから、それぞれの企業が自己努力すること。
大学やセンターが遠いと言わずに、自分から行けば良いと思う。

―官の役割、民の役割はそれぞれあり、連携も大事で―。

松浦:国や県のしきたりも変えられないし、企業側も変えられない。
だから、お互いに歩みよる努力をせねば。
今度センター理事長に副知事が就かれるので、心強い。
このセンターは全国レベルでも素晴らしい。
私共もいま光技術をやっているが、レーザに関する施設は日本のトップ級。
こんなセンターを、どう活かすか。
自分から訪ねていかねば。
県にも企業から、どんどん売り込んで出向いていく。
こうすれば、もっと活用されるはず。
こんな意味でも、一番良い人がセンタートップになられました。

―出逢いと対話のチャンスは、自ら作らねばならない。福井のセンターや企業には、技術や宝が一杯あるから。



山本副知事の戦略:福井の元気の処方箋は!

―これから福井をどうして行くのか。元気の処方箋を伺います。ところで、民間には大企業病、官には官僚主義がある。良く似ているようだが。

山本:はい、民の大企業病は与えられたことしかやらない。
他人の領域を犯さない。これが大企業病。
これを官におきかえたら、少しも変らない。これを壊さねば。
福井県の大企業は県。
一番に金を多く使い、一番多くの従業員がいる。
だから県が大企業病になったら大変。
松浦:この打破はコミュニケーション、話し合うことです。
マニフェストもそう。
何をいつまでにやるか、そんな目標をいつも語りかけること。
私共もいま機械工業協同組合連合会の枠を拡げ、出逢いを作り相互に何をやっているか、それを浮き出している。
そのためコミュニケーションを密にし、情報を共有する仕掛けを作る。
ここから若い人達も、多く育ってくると考えている。

―県が若手職員を集めて、ベンチャー事業の意見を集めたが、もっと大胆なものをと注文をつけたとか。

山本:松浦さんの話に加えて、もっと楽しくなけにゃいかんですね。
仕事の経過にしろ結果にしろ、楽しくなけにゃいかんですよ、人間ですから。
そんな面で、ベンチャー事業も最初は小さくても、やはり県が考えたものは違う、優秀だなと認められねば。
そうすれば職員もプライドがあるから、さらに良いもの大きいもの新しいものに挑むという、善回転になる。
こうして元気が元気を呼ぶと思う。

―物事は少し待たねばと、松浦さんはいつも言ってますが、数多くの種子を播いても花が咲くまでに、10年位もかかるとか。会社で実践されているようですね。

松浦:新商品を作り出すのに例えば、コア技術を始めてから商品化し、利益が出るまでに8〜10年位かかります。
当たり外れも、ありますし。
私共がリニヤをやった時も、レーザでも簡単にはいかない―。
逆に言えば企業のトップは、10年先を仮定し今、自分は何をやるのか、問いかけ行動すること。
そんな意味で、機械組合の若手経営者43人が動き始めた。
やはり行動しないと。現場主義です。




トップは何事にも辛抱、そして我慢

 いま現場で何が起きているのか、自分自身の五感で確かめねば。
これが若手の行動力となって初めて、成功の糸口もつかめると思う。
我々トップは我慢、我慢です。

―若手の行動をリーダーやトップが、どう見るか。

山本:新商品の開発は3年開発にかければ3年の寿命。
5年、10年かければそれだけの寿命は持つもの。
それ位の経験や勘どころは、トップが持っている。
私が勤めた会社でも、配転などで小さくとも組織のトップになった時、それまで自分の意見を先にどんどん言ってきたが、 トップになったからには意見は最後だよと言われてきたし言ってきた。
仕事や会議もしかり。
トップが言ってしまったら、それで結論あり、皆なが従ってしまう。
辛抱がいる、辛抱が。

―10月1日、知事が全職員にメールを出した。今までと同じ仕事のやり方をせず、違うことを考えろと。さらに福井はPR下手だが、イメージアップを考えろとも。松浦さんは昔から、福井の位置が日本列島からみて、日本のヘソだといっているが―。

松浦:これは私共の会社で、前専務で現在監査役の渡辺君が始めたことで、 福井をPRする時に日本列島の中心、弓なりになっている丁度ヘソあたりに、福井が位置しているから―。
松浦ニュースという広報誌に、福井の面白い話題をいろいろ集めて、日本のヘソ福井と最初に名乗った。
それを20年以上もヘソだヘソだと言い続けた。
そうすれば、そのように思ってしまう。
そのようなものですイメージは。会社や人のイメージは、やはり言い続けることが大事―。

―継続は力ですね。さて、福井は日本の中心、アジアの玄関口だと言われているが、先日、小学生の知名度調査で福井県が、大変残念な結果でした。これからどうやって福井や福井らしさをアピールすれば良いか。

山本:大きな課題です。
企業でもコーポレートイメージを高めるのに努力している。
福井は一品一品を見ると結構、良いものがあり盛んに売り込んで成功している。
けど、トータルでの福井を売り込むことを考えないと、福井のイメージアップにはならない。
松浦:福井は確かに面白いシーズは沢山ある。
日本の玄関口としても、永平寺もあるし遡れば継体天皇もいた。
永平寺もあれば、越前かにやおろしそばなど食べ物もうまい。
原子力発電の施設もある。
これら福井が持っている宝物を、例えば子供の修学旅行のルートにつなぐことも、ひとつのアイデアではないか。

―いろんなアイデアを集めて、福井を発信していく。元気な福井づくりに、これからも努めてほしいですね。本日は、ありがとうございました。


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