ユーザーを訪ねて No.110
株式会社正和

地道な開発・製造・販売の一貫メーカー
SHOWA正和ブランド

潤滑機器、油圧機器類で特異な存在

株式会社正和
本 社 工 場東京都板橋区小豆沢2-9-21
代 表 者代表取締役社長 斎藤守圀 氏
資 本 金1億円(平成14年3月現在)
売 上 高41.23億円(平成13年3月期)
従 業 員 数170名、他にパート75名(平成14年4月現在)
事 業 内 容工作機械器具、業務用冷蔵器具、スィングドア等の製造販売
営 業 品 目集中潤滑/給油装置、業務冷蔵/厨房総合用品、スィングドア、消防ホース洗浄機、油圧機器/油圧ユニット、各種カップリング、OA関連機器、その他一般機械/器具
[株式会社 正和・大宮工場]
所 在 地さいたま市膝子1430
従 業 員 数140名、他にパート60名
主 な 業 務株式会社正和の主要営業品目の潤滑給油装置並びに周辺部品の製造を主に流体用カップリング、油圧ユニットの製造


株式会社正和・大宮工場

 正義を重んじ、社会に貢献する。
平和な家庭を築き、会社に貢献する――「正和」の由来は、こんな同社の社是「正義・平和」から命名されました。
この社是が生まれたのも、第二次世界大戦が終わって間もない1946(昭和21)年1月、 同社の創業3兄弟が「敗戦のすさんだ世の中で、何か事業を起こしたい」との情熱だったとか。

 その創業者は、石井偕晴[ともはる]・石井啓祐[けいすけ]・石井理皙[みちあき]の3兄弟で、各種の工作機械部品や各種自動車部品、 ゲージ類及び水道器具部品の製作を手掛けた、石井機械製作所を東京都板橋区界隈で始めたことに遡ります。
そして、着実に発展し、8年後の1954(昭和29)年3月、正和製作株式会社として現在の社是が社名として具現化し、 石井3兄弟が力を合わせて本格的な事業を展開され、今日に至っています。

 第110回目の「ユーザーを訪ねて」は、戦後まもなく創業された株式会社 正和の唯一の製造工場、 埼玉県さいたま市膝子の、同社大宮工場を4月下旬に訪ねました。

<同社の製造と物流拠点が関東平野のドマン中、さいたま市に!>

 日本一広い関東平野のドマン中、埼玉県は交通の要所、JR大宮駅から東武鉄道野田線の岩槻駅から約4Kmに、 同社の大宮工場と物流拠点の配送センターがあります。

 同工場は、1962(昭和40)年10月に、30,000uの用地を取得し、創業地の都下板橋区小豆沢から移転して大きく事業を展開されました。
こうして幾多の変遷を経て、同社の事業は潤滑機器関連、産業機械や機器、 そして同社独自のノウハウによるダイキャスト成型やインジェクション成型による一貫生産の3部門に特化したメーカーに成長。
正和SHOWAのブランドは、国内直販の15拠点の他広く海外にも、その市場を求めて発展しています。

 特に、戦後事業を展開されてきた同社の特徴ある独自商品は、今まで培ってきた技術とノウハウを基本に、 開発・製造・販売まで一貫した物作りに活かされています。
消防ホース洗浄機やスイングドア、業務冷凍や厨房総合用品、油圧機器やカップリングなどの産業機器は、その好例です。

 中でも、消防ホースを素早く自動洗浄する装置として、東京消防庁を始め、多くの消防署で採用されていますし、 またスイングドアは、デパート、スーパー、コンビニエンスストア、レストランチェーンなどが一手に採用、 隠れたベストセラー商品です。
また創業間近、米国向けに黄銅鋳物製の水洗用バルブ金具を輸出し、同社の基盤を確立され、 それらの技術が朝鮮動乱の特需の信管に採用される特技もあったようです。


<潤滑給油装置と関連部品の製造を主としてカップリングや油圧ユニットを製造する大宮工場>

 さらに同社の営業品目として忘れてならないのが、潤滑機器と潤滑給油システムです。
いろんな機械の性能や精度を維持し能力を常に最良に保つためには、 潤滑油を円滑に供給することが不可欠ですが、この潤滑のための機器やシステムが、 同社の主要品目として各産業界から重宝され、活用されています。

 この潤滑給油機器やシステムは、給油箇所の特性によるオイル潤滑、グリス潤滑、 オイルエア潤滑のいずれかを選択しますが、 いずれも同社製品は潤滑油供給源から複数の必要箇所へ潤滑油を正確且つ完璧に供給できるため、 マツウラを始め著名な工作機械や、産業機械メーカーなどでも採用しています。
この潤滑機器は、もともと水や油などの配管や接続に使われるカップリング(接手)の製造技術とノウハウが活かされたもの。
このカップリングも、創業間もない40余年前の1955年頃から手掛けられたものが、 同社の技術とノウハウとして凝縮されました。
ただ、部品の性能や機能など中身は同じでも取りつけ装置や取り付け方法、 そして使い勝手などによって、機器を採用するメーカーの種類だけ増えるという多品種少量生産が、難点の由です。
同社の大宮工場は、同社主要営業品目の潤滑給油装置並びに周辺部品の製造を主として、 流体用カップリング、油圧ユニットの製造等を担当しています。


高速加工で活躍するマツウラのマシン


<特注品と思わず、標準品として、コストと納期にチャレンジ!>

 その大宮工場長の石井康之取締役は
「大宮工場の特色は、ダイキャスト製部品の内製による金型の設計製作、 鋳造成型を始め機械加工設備の充実により、主要部品の内製率を高くすることで加工技術の蓄積はもとより、 柔軟な標準化、品質管理を行なって、多種少量受注生産の事業形態の工作機械や産業機械などの市場で、 トップのシェアを維持しています。
早くからNC工作機械の導入、治工具の完全内製化、少ロット生産での自動化、省力化を進めました。
また、ダイキャスト鋳造ラインでは、30年余り前よりロボット導入、集中溶解炉による自動化を積極的に行ない、 今はMRP生産システムにより、10,000点を超える最終製品群の短納期対応化を進めています。
1品種400,000個のものから、1品種1個というものまでこなすことが我々の使命です。
大量生産の時代は終わり、多品種少量生産を如何に上手くやるか。
特注品というより1品種1点の仕事こそ標準の仕事として私達の工場の使命と思って努力しています」
と、話されます。

 そして今後は、蓄積した技術やノウハウを使って企画から開発設計、 そして金型からの樹脂成型やダイキャスト成型を、主要生産に目論んでいることも打ち明けてくれました。

治工具・金型も全て自社製 アルミ材の特殊冷却プレート



<高速切削加工のマシンで、同社の新分野を視野に!>

 その治具や金型などに、高速加工という新しい加工技術に挑んでいるのも、同社大宮工場の一つの課題だとか。
「高速加工切削という新しい切削加工技術は、私達にとって避けては通れぬ道です。
そのために、マツウラさんのマシンを昨年、永年の希望が叶って設備しました。
結果は、思っていた以上でした。
従来の加工時間の1/5以内で加工でき、高精度な加工面も驚きでした。
この新しい加工技術をこれからの大宮工場の切削加工分野で、新しい分野の仕事に生かしていきたいと思います」
と石井工場長。

 そして「リニアモータのスライド部分の、発熱を抑えるためのアルミ材の特殊冷却プレートも、 マツウラの高速機があってこそ、高精度の加工が出来ることがわかりました」と笑顔で話された石井工場長と、 同社金沢営業所の中島所長からも、同社の将来に大きな夢と自信が伺えました。

 同工場の正面に掲げられている「品質こそ我社の誇り。工程に心を込めて、お客様に信頼される製品を送り出そう。 株式会社 正和」の品質方針。
同社の努力と工夫によって一歩一歩地道に、そして着実に前進される姿が、同社の将来を約束されているようでした。

 


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