「中国の若者は燃えている・・・」
創立20周年記念/特別講師に長俊和・商工研常務が――
松浦共栄会21期定期総会・研修会(2001年11月30日開催)
――会長に土橋氏、副会長に西村氏――
土橋信夫 松浦共栄会会長
マツウラのマシニングセンタ製造用資材や部品などの納入業者、
ならびに下請け関係協力業者など主要68社で組織している、
松浦共栄会(会長はツチハシ社長の土橋信夫氏)は、昨年11月30日第21期定期総会を開催しました。
総会は土橋会長が議長となり、第20期事業報告と収支決算報告、
ならびに第21期事業計画案とそれに伴う収支予算案について、それぞれ原案通り承認可決。
また本総会で任期満了となる松浦共栄会の全役員9名の選出に入り、別掲の通り承認可決しました。
さらに総会で提案された「会員各位によるマツウラMCの販売促進と支援について、
最善の努力を行ってマツウラの業績向上に協力すること」が、満場一致で決議されました。
引き続き、創立20年周年の記念研修として、15時05分から約90分にわたって、
政府系中小企業専門金融機関の商工組合中央金庫
(略称:商工中金、本店は東京都、資本金4,939億円のうち約80%弱の3,940億円が政府出資)
シンクタンク機関、株式会社日本商工経済研究所の常務取締役、
長(ちょう)和俊氏が「日本経済の課題と展望――国際競争力の回復に向けて」と題して第1講を、
16時40分から約60分にわたり、松浦正則社長の「今後の世界情勢と工作機械業界展望」と題した第2講に、
わけて開催されました。
その要旨は、次の通りです。
第1講 日本経済の課題と展望
日本商工経済研究所常務 長俊和氏
- 1990年以降、日本はバブルが弾けたのにGDPベースでみた、現状のマイナスは上出来である。
特に冷戦後の12年間で日本のGDPマイナスは、たったの2回だけ。
それは、こんな状況の中でも大きくしっかり稼ぎ出している産業や企業が、マイナスを押し上げているからである。
米国などは1974年から82年までの8年間に、4回もGDPでマイナスを出していた。
この時期に、米国は日本の強さを勉強して、日本を負かすノウハウを学び、
1985年のプラザ合意によって、大転換させた。
それが今であることを、再認識してほしい。
- それは為替と金融との政策、そして、日本の全員参加により仕事をすることを学び、
そのまま実行して確実に日本を彼らは負かしてしまった。
日本の一番良い「智恵を出し合って、仕事を解決する」という手法は、
米国がナレッジマネジメントという、新しいビジネスモデルとして活用してきた。
日本の暗黙値による経営手法を、今こそ再認識しなければなるまい。
- 米国にとっての日本の関係は、今は日本にとっての中国の関係になっている。
その中国のパワーは、中国の若者で中国の地場メーカーが生産力の大半を占めており、また彼らの目の色がちがう。
彼らの目は燃えている。成果主義を先取りしたからこそ、日本以上に中国は力をつけてきたといえる。
日本の若者を見るにつけ、どうやって元気づけ目の色を変えさせるか。はなはだ難しい。
- 1985年までの日本の強力な経済力を、勉強した米国のマイケル・ポーター教授は、
ビジネスに勝ち抜く条件を3つあげている。
1. 資源を得意分野に集中投下する。
2. 集中分野で差別化する。
3. 集中化・差別化の結果として価格競争力をつける。
加えて、自社製品のライフサイクル上の位置づけを明らかにする。
競争相手は、どこに何社あって、それは一体誰なのかということを、知った上で戦うこと。
- 小さい会社や企業こそ、ビジネスに勝ち抜く条件がそろえられる、今が絶好のチャンス。
古参のアナログ人間を大事にする会社や職場ほどIT化に成功する。
ITをこれらのビジネスに活用して、しっかり儲けてほしい。
- 日本の精密機械や自動車関連の中小企業などの技術レベルは、世界のトップレベル。
だから、ある日突然に異業種の外国企業から大量発注の夢が現実になることも。
個別企業にとっては、チャンスが到来したときに、すぐ対応できるように力を蓄えてほしい。
こんな、かなり強烈に頑張っている企業があるから、これだけ日本が悪い中でもGDPが-0.9%程度でおさまっている。
皆さんも是非このチャンスを逃すことなく、元気を出して努力してほしい。
第2講 今後の世界経済と工作機械展望
松浦機械製作所社長 松浦正則氏
- 1945年以降からソ連を敵対国としてきた米欧諸国が、1989年の冷戦構造崩壊以降から、
仮想敵国を日本におきかえて、日本は打ちのめされた。
それが日本の今の姿である。
また、一強三弱だと思っていた都市銀行の4グループが、本当は一弱三問題であると、
言われていることでも日本の実態が大変であることが明らかであろう。
- 私達は、かって経験したことのない、構造変革の中におかれている。
という事実を認識せざるをえない。
そんな中で工作機械の市場は、国内では既にピーク時の1/3以下に激減している。
生き残るためには国内市場だけでなく、海外市場に活路を求めざるをえない。
2001年に入って、わが業界で歴史ある会社が3社も倒産しているのは、日本市場に糧を求め過ぎたからである。
マツウラは運良く、海外市場を他社より先駆けてきたから、生き残っている。
この生き残っている間に、他社がやっていないレーザー応用や、リニアモータマシンへのシフトなどで努力している。
成功するか外れるか、だが進まざるをえない。
- 先日、ホンダの吉野社長に会った。
いよいよ生き残りをかけたサバイバルゲームに突入するため、他社に出来ない新しい技術や開発を、
日本でやると言われていた。
日本でやる理由は、この研究開発にとって大事なこと、情報を共有することだが、
日本語でなければ微妙なコミュニケーションが、円滑にできず失敗しかねないからだ。
その開発は時間への挑戦で、究極かつ極限へのチャレンジとして、その目標をF1においている由。
- 9月11日の米国本土の中枢を襲った同時多発テロで、アメリカンスタンダードが全て変わった。
いらい米国は日本を無視して、中国とロシアへ急接近し3国でタッグマッチを組んで、
大きく動き出そうとしている。
そして自由さや便利さは、一切なくなり安全という名の規制を行って枠組みを始めている。
今までアメリカンスタンダードを信じて、動いてきたのは正に日本のみ。
こうみると私達は、恐らく昭和40年代の生活レベルまで、落とさねばならなくなると思う。
政治家も官僚も、企業人も誰もが、国益を考えず、誰も責任をもたない。
- 景況を大胆に予測すれば、2002年第2・四半期(4〜6月)が底かと思う。
そこから少しずつ動き始めるはずだから、私達への動きはさらに遅れてくる。
今、正に土砂降りの状態で、商品やサービスの差別化には時間がかかる。
やっと、マツウラもリニアモータマシンのLXシリーズが市場から評価を得はじめ、
大手メーカー数社から複数台の発注を頂き稼動を始めた。
MAM72-3Vシリーズも注目されている。
- 日本市場に生産部門が残るのは、試作品とスピードで勝負する特殊品。
そして量産ものでなく一品もの――と限定されてしまう。
確実に残ると見られているのは、自動車業界。
トヨタ・ホンダそして日産に代表される、自動車業界こそ、日本に残る唯一のビッグビジネス。
それも、F1など極限に挑戦できる技術開発に、果敢に進められるメーカー群だろう。
- 先程、第1講で話された長俊和常務さんが、指摘の通り、日本にはまだまだ儲けられる、
ビジネスチャンスはある。
小さくても儲かっている所がある。
夢をみて、私達も頑張りたいもの。
特別講演(研修)に耳を傾ける会員
松浦共栄会 新役員(任期2年)
会 長 | 土橋信夫氏(ツチハシ社長) |
副会長 | 西村 明氏(ニシムラジグ社長) |
会 計 | 岡島和憲氏(エフワイ運輸機工社長) |
同 | 渡辺清一氏(松浦機械製作所専務) |
役 員 | 奥田 篤氏(奥田精工会長) |
同 | 宇野秀昭氏(宇野歯車工業社長) |
同 | 坪田正武氏(ジェスクホリウチ部長) |
同 | 島田義次氏(大電産業取締役) |
監 事 | 宮下英夫氏(三興電機製作所社長) |
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