松浦共栄会20期定期総会(2000年11月17日開催)
「元気だそうニッポン、社長」 榎本 明 氏
「西暦2000年の総括」 松浦 正則 氏



土橋信夫松浦共栄会会長
土橋信夫松浦共栄会会長
 マツウラのマシニングセンタ製造用資材や部品などの納入業者、 ならびに下請関係協力工場など主要68社で組織している松浦共栄会 (会長はツチハシ社長の土橋信夫氏)は、昨年11月17日第20期定期総会を芦原パストラル青雲閣で開催しました。

 総会は土橋会長が議長となり第19期事業報告と収支・決算報告、ならびに第20期事業計画案とそれに伴う収支予算案について、 それぞれ原案通り承認可決。

 引き続き、恒例の特別記念講演が開催され、共栄会会員の研修を行いました。
15時から約60分、マツウラ社長の松浦正則氏が「西暦2000年の総括」と題して第1講を、 第2講は16時15分から約70分にわたり、中小企業金融公庫福井支店長の榎本明氏の「元気出そうニッポン、社長」でした。

 記念講演要旨は、次の通りです。

松浦社長
 松浦社長
「西暦2000年の総括」
株式会社 松浦機械製作所社長
 松浦 正則 氏
  1. 今、話題のIT(情報技術)を、大きな視野で確認してみたい。
    それは1980年代に日本がリーダーと自他共に思っていたのに、湾岸戦争が始まってみると、 やはりアメリカが全ての面で世界のリーダーであると、世界中が確認された。
    そのリーダーのアメリカがIT産業を中心として、大変化したからである。

  2. 新米国大統領が、いずれ決まる。この米国の財政収支が単年度で黒字になったのは、2年前の1998年で、 原動力がニューエコノミーといわれる、アメリカの実態であり実力である。
    財政の健全化は、1945年に終戦となったベビーブーム時代の個人消費ブーム到来からで、 住宅や自動車など個人消費が出来る、年令の広さであろう。

  3. 個人消費以外で大きいのがIT。日本は携帯電話に代表されるモパイルで、独身の若者が圧倒的なユーザー。
    反対に自営業者や勤労者などは、ITツールヘの消費にはむいていない。
    従って消費そのものが大きく変化し、偏っている。

  4. だから従来型の、製造中心ビジネスから、企画や販売が中心となったビジネスへ、変化していることがわかる。
    これは人件費が高いからで日本の景気が、全体に浮上する回復は起きてこない。

  5. こんな状況ながら米国は、ITビジネスをうまく経済と産業に取り込み、産業と経済の活性化につなげたと思う。
    日本ではITの代表選手として携帯電話のNTTドコモのiモードがある。
    すでに2,000万台のiモードが利用されるなど、これらを活用した新しいビジネスが、生まれ動き出していることも事実。

  6. このコンテンツが諸々の市場要求の中で、どんどん変化しているから、 そこからさらに新しいビジネスが生まれ育っていくことになる。
    例えば、新しいCPUが出来れば(現在の技術を駆使して)人さし指大の携帯電話が実現するという動きがある。
    こうなると現在、量産中のものが瞬時に変革を求められることになり、大きなリスクを生みかねない。
    こんな状況からか、この8〜9月には半導体業界が少々、頭打ち感が出たといわれ出している。

  7. 光ファイバーを利用した光通信は、携帯電話の約8〜10倍以上のシェアアップをしている由。
    だから、これからは光通信への絞り込みになるものと思う。
    すでにこのことは、マツウラNEWS!2000年11月号のシングルorダブル欄で話している通り、 米国は国家戦略によってシステムを構築し、国家機密を中心とした取引のほか、 電子商取引でも機密保持から利用されようとしている。

  8. 日本の現状認識は、政治不信といいながらも、工業生産も生産設備も着実に動いており、 1998〜'99年の最悪は脱してきた。
    住宅も底を打ち、個人消費もトータルでは着実に増えている。
    これはユニクロ現象による、機能重視で低廉な商品の購入が伸びていることをみても、証明される。

  9. アメリカは個人消費を中心として、116ヶ月好況を持続しており(特に情報・金融・バイオを中心として) 米国の株価が維持出来れば、個人消費は維持され好況が持続しよう。
    ただ、ここへきて米国は、中国を完全なライバルとしている事実がある由。
    それは中国が市場経済に移れば移るほど、中国に力がつくからでその動きは既に始まっている。
    ただ日本にとって中国問題は、大きな踏み絵になってくると思う。 次の大統領選がある2004年までは、大きな変化はないものの、2004年以降は日本にとって、大きな圧力になるのは確か。
    こうみると今が、日本の景気はピークとみるべきか、とも思う。

  10. 先日のJIMTOFは盛況裡に終わった。
    これは工作機械などモノ作りの設備投資が12年周期で行われ、1990年に過去最高の受注(設備投資)の、 更新需要であるという見方に重なってくる。
    ただ大型機械が受注されはじめたことと、米国景気の動向如何によっては、ひょっとして心理的に難しい局面を迎えるかも知れない。
    2001年3月の企業決算には、これらが影響しはじめるので注目したい。

  11. ただ米国の工作機械需要層の1/4が、医療や医薬品・健康産業がらみで占めており、 日本のこれらの割合が1%にも達していない事実をみると、米国は健全な次世代ビジネスに移行していることがわかる。
    だからITがらみから、医療・医薬品・ゲノムなどへ移行しているなど、伸びている業界、 伸びているビジネスヘの足がかりが見つかれば来年も面白い年になろう。
    しかし米国全体として横ばいが結論で、日本の動きを米国からコントロールされて行くのではと思う。
    即ち米国市場で大きく勝負するマーケットには、日本は絶対に手を出せないようなことになろう――。



榎本支店長
 榎本支店長
「元気出そうニッポン、社長」
中小企業金融公庫福井支店長 榎本 明 氏

  1. 中小公庫は広告宣伝の予算もなく、ロコミで今日のようなセミナーで、話せる機会を頂き嬉しく思う。
    今日のような、元気な企業の皆さんばかりだと、話しのしがいがある。

  2. やはり国も会社も、身体も元気でなければ何も出来ない。
    何のやる気も起きてこない。
    だから、物事の考え方をマイナス指向から、プラス指向へ変えてみてはどうだろう。
    ひょとすると、考え方ひとつで、随分と見方や考え方が変わるのではないかと思う。
    世の中、殆どが誤差の範囲内であり、あまり神経質にならないで欲しい。

  3. さてプラス指向でみて、日本はそんなにダメなのか。
    日本国中が「うつ病」にかかっているのではないか。
    うつ病の人は、今の自分はダメ、過去の自分もダメ、将来の自分もダメという考え方で頭が一杯になって、 だからダメなんだと思っている人を言う。
    今の日本は、世界中からダメと言われ、マスコミからも言われ、会社でも家でも言われている。
    しかし客観的にモノを見て、モノを考えてみると、日本もまだまだ大丈夫なんだと、わかるはず。

  4. それでは日本の良いところを、具体的に知ろうではないか。
    例えば日本の実質成長率を、1990〜1999年の10年間で見ると、何と13%も伸びており(GDPで438.8兆円から493.8兆円)、 ここ2〜3年は確かにマイナスだったが、少し長い期間7見れば、GDPは55兆円も上昇している。
    また高齢者が、どんどん増えて、誰が実質的に負担するか心配しているが、本当に要介護者は高齢者の10%未満で、 あとの90%余りの方々は元気で生活されている。
    年金支給の方法を一部、見直しすれば世の中を悲観するほど心配しなくても良い。
    モノ作りも日本が世界の先端的なところを担っている。
    GDPの比較でも、総生産の比較でも外貨準備高の比較でも、やってみてはどうか。
    日本の実力がわかろう。

  5. 今、私達の金融資産は大変な低金利だが、1年1世帯で80万円増えている。
    日本全体で36兆円の増加。そして日本財政収入の33兆円が国債で、そんなに国が借金して返せるかと言われているが、 この33兆円は個人が消費せず、個人の代わりに国が消費しているに過ぎない。
    だから日本の財政は極めて健全とは、言わないが、従来は国でなく民間企業が借入していたもので、 これによって生産性を向上させ、循環させるだけ。
    今の日本への知恵と工夫で、これらは必ず解決できるはず。

  6. 企業経営における常識の盲点がある。
    赤字の仕事を止めれば、業績は改善するはずというが、儲けたつもりが、実は損が増えることが多い。
    常識が実は大きな間違いであったことに、気をつけてほしい。

  7. いずれにしろ、お互いに明日に夢をもち、元気を出して明るく生きよう。
    それはマイナス指向をプラス指向に、転換するだけ――だから。
セミナーの様子



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