松浦: | ようこそ福井へおいでいただきました。
今日は、今盛んに言われるネット経済やネットワーク、インターネットとか、通信に関する言葉がいろいろ世の中に出ますね。 その中で我々を取り巻く環境の変化を日本サン・マイクロシステムズの会長の立場で、お話しいただけたらと思います。 特に福井の人は、よそ事の様に思う事がありますので…。 |
本田: | いや福井の方は、情報に敏感な土地柄だと思いますよ。
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松浦: | そうですか。
それでは、ネットワークやネット経済という言葉で、今起きている事で本田さんが感じておられる事をお話しいただけませんか。 |
本田: | では、とても身近な例ですが、NTTドコモさんでi-modeを発売されました。
丁度一年になりますが、おそらく3月末までに既存のドコモに加えてi-modeに加入された人が500万人。 これは大変な数ですよ。1日に2万人ずつまだ増えている計算になります。 なぜi-modeがこんなに受けたかというと、日本のインターネット社会が幕開けを象徴的に示していると思うんですね。 担いでいるのは若い方々ですけど、若い方達のエネルギーがそこへ出て来ているという事は、 日本の経済がこれからネット経済へ入って行く予兆どころか、すでに始まったという事ですね。 |
松浦: | そういえば、先日ロンドンへ行った時の話しですが、アメリカの女性エコノミストがロンドンに来て、
「今は日本の渋谷のビットバレーに注目しろ」と話して、ロンドンの人は驚いたそうですが、
結局ビットバレーなどでi-modeなどが使われているんでしょうね。
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本田: | i-modeもいわゆるインターネットなんです。
インターネットがどうして経済を化けさせるかといいますと、基本的にこれは無限のコネクションといいますか、 誰が誰とでも繋がれる機能を持っていますから、しかも非常に安いコストでリアルタイム。 今までのあらゆるビジネス形態に、変化をもたらす可能性があるという事ですね。 そこから出てくる悪いシナリオもあります。 直接に供給者と需要者が繋がれますから、中間の仕事が無くなるから大変な事になるのです。 |
松浦: | という事は問屋さんが無くなったり、中間業者が無くなるという事ですね。
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本田: | 悪い面を見るとそういう面があります。
しかし、良い面を見るとそれだけ経済、あるいはすべての取引の効率、これが高まるという事ですね。 |
松浦: | それはありますね。それが今のアメリカですか。 |
本田: | そうです。しかもアメリカでは、5年前に起きたと言われています。
95年からインターネットで経済の爆発が起きたと。 それは、いろんなデータ等からちょうど日本の今年に当たると見ています。 |
松浦: | ミレニアムの2000年はアメリカの1995年と似ているんですか。 |
本田: | はい、95年にですね、アメリカは2億5千万の人口でしたが、インターネット人口は3千万人、すなわち15%ですね。
で、今の日本はちょうどその辺を通りかかっているんです。 日本は5年遅れているんですが、驚いたことに先日i-mode1年祝賀パーティーでドコモの立川社長が 「今後i-modeが全面的にドコモの基本標準仕様になる」とおっしゃたんです。 携帯電話の加入人口は5千6百万人で、それが全部インターネットに組み入れられるとなると、日本は15%どころではなくて、 その5千6百万人に、既にインターネットだけの人口1千3百万人を上乗せすると、全人口の約半分がインターネット人口だと考えられます。 そうすると、アメリカを飛び越してしまう可能性があり、そういう凄いところに日本は今、差し掛かっているんです。 |
松浦: | それがビットバレーですか。
偶然友人がダボス会議に行っていた時に、日本の黒田財務官がスピーチされ、 最後に「今日本では、携帯電話が、5千6百万台を超えた」と言ったら、今まで静かだった会場が本当に大きくどよめいた。 それ以来ノキアの幹部達が日本に注目し始めたそうです。 |
本田: | 私も、仕事柄家電メーカーや通信機器メーカーによく出入りしますけど、廊下や会議室の前を通るとi-mode、
i-modeってそこら中から聞こえますよ。
つまりこのi-modeがいかに、停滞する日本の経済に活力を与えつつあるか、という事だと思うんです。 そこにのっかってくる仕事や商売の形態を考えると、その広がりは凄いものがあると思います。 |
松浦: | なるほど。時に今の日本株式もネットに関連する株価が非常に高い。
儲かってもいないのにどうして、という一面が見えますね。 これについて先進的な国であるアメリカの株価から見て、いかに変化が起きているのか、今後どうなるのか、お話し下さい。 |
本田: | はい、アメリカのグリーンスパンは、今の景気の過熱、というよりも株価の熱狂的な状況を非常に心配しています。
それを踏まえて徐々に金利を上げる形で、引き締め姿勢に入った結果、ニューヨークのダウ平均株価等が沈静化に向かっているんです。 ところがナスダックという店頭市場は、これを無視して上げ続けています。 これは、ちょうど10〜11年前の日本の株式市場を思い起こさせるのですが、しかしナスダックを引っ張っているのは、情報通信、 インターネット絡みの銘柄なんですね。 ただ、彼らの財務内容をよく見るとまだ黒字になっていない。 そこをバブルだという見方もできるのですが、資本市場というのはそれほど馬鹿ではなくて、このようなネットの広がりの先を見ているんですね。 ネット経済の上に、新しい需要や仕事の形態がのっかって来るんです。 その結果、経済が変貌していき、今赤字の会社も凄い収益機会を持つ事を、資本市場が感じ取っているという捉え方なんです。 もちろん、株価の絶対水準を説明できるかといったら出来ないんですよ。 だから、この問題はいつも議論が分かれます。 バブルだという見方もあれば、予兆だという見方もあります。 |
松浦: | なるほど。私共のビジネスで、海外にも展開している中で一番感じますには、どうも情報化社会は、
グローバリズムとして単一市場で、一物一価になった。
一方では、今まで国家などでコントロールされていて、それなりの順列が決まっていたのが、地球と個人が結び付いた為に、 60億人総参加の時代になったと、感じてならんのです。 |
本田: | 今のおっしゃった点は、業界では主体別に企業をBusinessのB、消費者はConsumerのC、政府はGovernmentのGと言っています。
でB to Bは、松浦とサンのBusiness取引、これをインターネットでやりましょうという事です。 これを大手の電機メーカーさんがそのすべての下請けに、これからはすべてインターネットでやりましょうとおっしゃっている。 これは当然の成り行きですが、Businessから一般Consumerに向けてホームページ経由で、我が社の新製品はこうです、 財務諸表はこうです、見て下さいと言う事で進んでいるんです。 それに対して、何十万というアクセスが行われる。 これをB to Cという、これも始まっているんです。 次に政府も、通産省主導で電子化しようと、政府サービスも政府への物の納入もすべてインターネットでしましょう、 というところまで来ていますから、これはG to GでありG to Bであり、今や印鑑証明まで電子化しようとしていますから、これはG to Cですね。 従って、BとCとGの3つの組み合わせは9通りありますから、経済のあらゆる取引次元に渡ってインターネット的な、 つまりe-businessが入って来つつある、そういう時代に来ているという事になります。 |
松浦: | そうするとインターネットは、非常に先端的で未来があるんですが、これにおける問題点は何でしょうか。
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本田: | まず、この頃ハッカーが入り込んできて、ホームページが書き換えられたという問題もありますので、
セキュリティーと呼んでいますけれども、間違いない相手から来ているのか、
その辺の技術的な暗号技術も含めたセキュリティーの補強というのは絶対に大事です。
それから2番目に重要なのは、本人であることをどうやって証明するという点です。 私達は、銀行のキャッシングカードを4桁の数字で、何百万というお金を出し入れしていますから、 そんなに気にしなくて良いかもしれませんが、いずれにしても問題ですよ。 で、これらを基本条件として、いざe-mailなりインターネットで取引した結果、お金はどうやって払うんですか、という決済問題。 それから買った商品をどうやって受け取るんですか、いわゆるデリバリー問題。 これらは大きな問題です。同時にそこに大きな仕事の、可能性も出来てきているんです。 例えばデリバリーですと、コンビニエンスストアは全国に2万店以上ありますね。 そういうところに、物凄いビジネスチャンスが生まれてきているんです。 さらに決済でも、コンビニか郵便局がいずれも2万店、3万店の規模です。 日本はその点コンパクトに出来ていますから、そこから新しい仕事が比較的安全に早く根付く可能性があると思うんです。 |
松浦: | そうすると、例えば流通のあり方も変わる、金融のあり方も変わる。
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本田: | 何もかも変わりますね。
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松浦: | 何もかも変わる。(以下次号へ)
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